●3 目が覚めたらそこはバンコク

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 ファンしかついていない部屋は、日が昇るにつれ部屋の気温も急上昇。

暑くてとても寝ていられない。
ファンもぬるい空気をかき回すのみ…。

起きて、水シャワーを浴びて身支度。
シャワーを浴びても、いろいろしているだけでまた汗が噴き出す。

雪国育ちのわたしは汗をかくことに慣れていないので、常に汗をかいている今の状況がとても気持ちが悪い。

でも、まずはお外へ!!!

まずはカオサンロードやその周辺を歩いてみよう。

立ち並ぶお店、渋滞天国のバンコクは止めどなくタクシーや車が道を塞き止める。

どこに行っていいかもわからないし、何を食べていいのかもわからない。
何より、わたしは英語全然出来ないしで、ただ歩き回る。

話しかけられても「ハロー」すら恥ずかしくて言えない…。

結局レストランにすら入れず屋台で串焼きなどを買ってゲストハウスに戻って食べる。

でも見たこともないお寺や、にぎやかなカオサン、コンビニ、気持ち良さそうなオープンエアのレストラン

わたしはひとりぼっち。


この後数日間、わたしはひたすら歩き回ることになる。

博物館、美術館、名もなきお寺、チャイナタウン、王宮、ワットポー…今になって考えたらあんな炎天下に歩いて行くような距離じゃないところにも歩いて行っていた。

そして、やっぱりレストランには入りづらく、買い食いくらいで食事を済ませていて、やせ細ってしまうのだった。
美味しい物に溢れたタイで…。

歩いて、見て、珍しいものに触れる生活が数日過ぎた頃、わたしの身体に赤い斑点が現れた。

かゆくてかゆくて布団にこすれるだけでも大変で、何度もシャワーを浴び、全身ベビーパウダーだらけになって青息吐息に…。

 二十数年間閉じていた汗腺が開き、溜まっていた老廃物が一気に皮膚から放出されたのではないか?酸性の汗が出たのでは?と今では思うばかりだけど、北国育ちのわたしは全身にひどいあせもが…。

 その後、さらさらした汗をかくようになり、あせもも引いて行ったのだけど、その後わたしの基礎代謝は驚くほど上がったのでした。

 その国や土地の気候で本当に人間は違う順応の仕方で生きている。

「汗をかけるようになった」ことは、その後の人生にとてもよい変化をもたらしてくれました。

 



●2.まずはカオサンロードへ行ってみよう

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 わたしの乗った大韓航空の飛行機は千歳→ソウル→バンコクという便。

ソウルでは3時間のトランジット。

ソウル市内まではバスで一時間…、ソウルには興味があるけど外に出ると忙しなくなりそうなので空港内を探検。

無料のインターネットが使える場所がある…と聞いていたので、探してビールを飲みながらネット。

あっという間に時間は過ぎて、バンコクへの飛行機に乗り込む。

さすがに緊張してきて…、ソウルの夜景を胃が痛くなりながら眺める…。

ガイドブックの「タイで巻き込まれる犯罪に注意」という項目を熟読してしまう…。

ギャンブル詐欺、宝石詐欺、スーツ詐欺、夜のタクシーの女独り乗りは危険…。

わたしがバンコクに着くのは夜中12時…。

そこから入国の審査など色々していて1時までに出られたらラッキー。

空港から私が目指す安宿街「カオサンロード」までエアポートバスが出ているそうだけど、バスは1時までの営業…。

間に合わなかったら、初バンコク、夜のタクシー女独り乗りなのです。

う〜ん…
すごく愉しみ!でもやっぱり不安…。早くバンコクに着きたい。でも怖いから着いてほしくない気もする…。

ぐるぐるしながらビールを飲む。

外は濃い闇。ずっと月を追うように飛び続ける飛行機。
時差を飛び越えるため、飛行機は二時間長いフライト。

うとうとも出来ずにいたら、アナウンスが入りバンコクの夜景のキラキラが見えてきました…。

まわりは韓国人の観光客のおばちゃんおじちゃんの山。

タクシーに同乗できる日本人が見つかりますように…。
(コマメちゃんが、空港でタクシーをシェア出来る日本人を捜せ!」と教えてくれていた)

飛行機を降りるとむわっと湿気の多い南国の空気。
明らかに日本と匂いが違う。
身体にまとわりつくべたべたした風。

キョロキョロしながら日本人を探しつつ手続き。
至る所に「アメージングタイランド」の広告が貼られていて、とってもエキゾチックなリゾートの写真などが旅情を盛り上げてくれるけど、今は深夜…。

目をつけていた日本人の団体さんや韓国の団体さんはあっという間にツアー出口へ消えて行き、「わーん、どうしよう。誰かいないかな???」とオロオロしていたら、出迎えのタイ人にも反応せず歩くバックパッカーらしき日本人の女の子を発見。

「あ、あの人はひとり旅だ!」

「日本人ですか?」(この後、何度この言葉を言い、言われたろう?という言葉)と近寄って行き、チャイナタウンへ向かうという日本人の女の子と無事タクシーをシェア出来たのでした。

 彼女はもう何度もタイに来ているようで、チャイナタウンのホテルも予約してあるのだという。バックパッカーはみんなカオサンロードに行くんだとばかり思っていたわたしは「チャイナタウンからカオサンまでがひとりぼっちか…。」とまたぞろ不安に。

その彼女に「大丈夫ですよ〜」と励まされ、チャイナタウンでお礼を言ってお別れ。

 深夜のタイの町並みはごちゃごちゃしていて、セブンイレブンが煌々と明るくて、電飾が珍しくて、タイの国王のポートレートがはめ込まれたド派手な看板が林立し、お寺の屋根が夜なのにキラキラしてて、目に入ってくるタイ語が訳わからなくて、道をふらふらしている人たちをただただ眺めていました。

 何もかもが初めて見る光景に、嬉しくて嬉しくてでもものすごく不安で
自分の中が目まぐるしく忙しくて、ドキドキしてわくわくして、自分が今どこにいるかもわからなくて、タクシーのラジオから流れてくる不思議な歌、不思議な発音の言葉、全てが刺激的でした。

 やっと着いた夜のカオサンロードは国の取り決めで早めに店じまいがなされていて、祭りの後のような閑散とした雑然とした、食べ物の匂い、何かが腐っているような匂いがする不思議な通りでした。

「コマメちゃんが言っていたのと違う。カオサンは朝までずっとお祭りみたいだって言ってたのにな〜」

 客引きやトゥクトゥクに声をかけられながら、それをかわしつつ、NAT2へ。

 カオサンを外れた細い通りにそれはありました。

 薄汚れた小さいゲストハウス。

 でも他に選択肢がないわたしは一泊500円にも満たないシングルルームにチェックインしました。

 階段の裏に注射器が落ちていたり、部屋に白いヤモリが入ってきて慄然としたり、壁が薄くて隣の物音が丸聞こえだったりのお部屋に荷物を降ろし、宿で買ったビールで無事の到着を祝いました。
(コンビニではビールを売ってくれなかったのです)

 もう来てしまったからには仕方ない。

 旅は始まってしまった。

 日本のものより苦いビールを飲みながら、天井で回るファンを眺め、ベッドの上でため息。

 しかし、バンコクは暑い…。。。。



●1.旅に出てみよう

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 タイがパラダイスだと教えてくれたのは、ススキノでアクセサリーの道売りをしている「コマメちゃん」でした。

 コマメちゃんは主にシルバーアクセサリーを扱っており、タイで仕入れをしているのだそう。

 タイはシルバーが安いんだ…と旅に疎いわたしが興味を持ちました。


 わたしはネパール雑貨のお店でお手伝いをしていたことがあり、ネパールの曼荼羅やシルバー細工や手漉き紙などに心惹かれていました。


 「タイはチケットが安いんだよ。タイまでチケットを買って、あとはタイからどこへでも行けるよ」

 …じゃあ、ネパールやインドへも行けるのか…


 お金を貯めつつ、コマメちゃんにいろいろ教えてもらいながら、旅の準備を進めました。

 海外旅行なんて、学校の旅行でフランスへ行ったくらい…。

 団体行動が苦手で、ひとりで歩いた自由時間がドキドキしたけどとても楽しかった。
 あんな感じで海外を気ままに歩けたら楽しいだろうな…。

 嫌になったり、お金を盗まれたりしてしまったら帰ってくればいいし…。

 一人旅なんて怖いけど行ってみようかな…。


 わたしはネパール雑貨のお店で魅せてもらった曼荼羅を細かいところまで理解し味わうために「描いてみたい」な…と大それた思いつきがあったのです。

 ネパールに足を延ばして習えるものなのか、下見に行ってもいいな…なんて考えました。

 そんなに甘くはないだろうけど、いろいろ楽しいこと考えないと、思い切りがつかなかったのです。



 親を納得させるため、自分でお金を貯めてチケットを買い「行ってきますので…」と言ったわたしに母は「それはもう、反対出来ないの…?」と悲しい顔で言いました。





  地球の歩き方「タイ編」にコマメちゃんからの情報を書き込んで、バックパックも買って(今思えば小さかったのですが)、タイへ旅立ちました。

「向こうで会おうね」とコマメちゃんと約束をして…